今後の米金融政策を読み解く上での重要なポイントを押さえておきたい。
2014年 03月 24日 10:53 タオバオ代行
<実態は共同議長体制>
最後にもうひとつ、今後の米金融政策を読み解く上での重要なポイントを押さえておきたい。
オバマ大統領は、FRB副議長にフィッシャー前イスラエル中銀総裁を指名した。すでに上院の公聴会を終えており、承認されれば、イエレン=フィッシャー体制となり、これは実質的に共同議長体制と言える。
フィッシャー氏はマクロ経済学の研究者として大きな実績をあげているが、教師として傑出しており、バーナンキ前FRB議長、ドラギECB総裁、そしてFRBの最重要ポジションであるFOMCセクレタリーのイングリッシュ氏、チーフエコノミストのウィルコックス氏がその教え子である。
国際通貨基金(IMF)副専務理事時代にアジア危機への対処に取り組み、見事に危機をおさめ、その後、それらの国々が比較的堅調な経済成長を遂げていることが注目される。そして、金融危機下でイスラエル中銀総裁として、その対処も成し遂げている。
では、このイエレン=フィッシャー体制のアジェンダは何か。それは、金融の安定だろう。
先日、フォワードガイダンスにも弊害があることを、国際決済銀行(BIS)が四半期報告で痛烈に指摘した。ゼロ金利を続ければ、金融不均衡、すなわちバブル膨張が助長される心配をすべきというのである。完全雇用回復のためにゼロ金利を続けるとなると、この問題をクリアしなければならない。その対処には、健全な金融監督が有効であり、必要である。そのとりまとめ役として、フィッシャー氏は適任だ。
金融システムの健全性を確保し、金融緩和で雇用情勢を一層改善させ、さらにシェール革命による追い風も吹くとなると、米国経済には明るい見方ができる。中銀総裁たちがアジェンダを果たしてきた実績をみると、その展望は侮れないところがある。
*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長就任後初の連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場とのコミュニケーションにやや失敗してしまったと、筆者は考えている。
というのも、最も重要なFOMC声明に込めたメッセージが市場にうまく届く前に、異なる2つのルート(政策金利予想と記者会見)を介して意図しないメッセージが伝わってしまったからだ。
以下、FOMC発表内容およびイエレン議長会見のポイントを整理しながら、具体的に見ていこう。
<火消しなければ新興国懸念再燃も>
まず今回(18―19日開催)のFOMCでは、市場の予想通り債券購入額が毎月650億ドルから550億ドルに100億ドル縮小された。このままのペースで毎回のFOMCにおいて100億ドルずつ減額されていくと、9月の会合で150億ドルにまで縮小される。
10月に150億ドルを一気に削減し量的緩和(QE)に終止符を打つか、それとも10月は100億ドルで12月に50億ドル削減し段階的幕引きを図るのかは分からないが、いずれにしても順調に進めば今年中にQEは終了することになる。
そのほかでは、インフレ率が2%を下回る場合には、失業率が6.5%を下回った後も相当な期間、現在の政策金利を維持するというフォワードガイダンス、いわゆるエバンスルールが今回の声明で廃止された。ここまではある程度予想の範囲内だった。
だが、同時に公表されたFOMC委員による政策金利見通しの引き上げが、意図しないメッセージが広がる第一のルートとなった。
具体的には、2015年末時点の政策金利について昨年12月のFOMCでは10人の委員が0.75%以下にとどまると予想していたが、今回のFOMCではその人数が6人に減少していた。さらに政策金利が1%になっていると予想した委員は昨年12月の2人から、今回は5人に増加。16年末時点の政策金利についても、2%以上の水準を予想していた委員は昨年12月の8人から、今回は12人に増えていた。
この時点でドルは主要通貨に対して急騰していたが、さらに追い打ちをかけたのが記者会見でのイエレン議長の発言だった。これが第二のルートだ。
FOMC声明には「予測されるインフレ率が2%の長期的な目標より低くとどまり、長期的なインフレ期待が十分に抑制されたままとどまるようなら、現行のフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを資産購入が終了した後も相当な期間維持することが適切」との文言がある。イエレン議長は記者会見でこの「相当な期間」とはどのくらいかと聞かれ、「定義は難しいが、おそらく6カ月前後」と答えてしまった。
前述の通り市場は今年末までに債券購入プログラムが終了すると考えている。そこから6カ月後に利上げが行われるのであれば、そのタイミングが来年半ばと考えても無理はない。それまで市場の大勢は利上げについて来年末頃と織り込んでいたので、開始時期に対する期待が前倒しとなり、ドルはさらに上昇した。
今後は、イエレン議長やどちらかというとハト派寄りの委員による火消しが始まると考えられる。そもそも、FOMC声明には「フォワードガイダンスの見直しは過去数回の声明で表明した委員会の政策意図の変更を示唆するものではない」と明確に示されている。また、委員の政策金利見通しについても、イエレン議長は記者会見の中で、フォワードガイダンスとして重要視すべきではないとしている。
一気に高まった15年央の利上げ期待が再び15年末に戻されるような発言があり、市場がそれを信じれば米金利は低下し、ドルは売り戻されるだろう。
逆にそうした火消しがなく、米長期金利が上昇トレンドに入った場合、警戒すべきは新興国市場の動きだろう。昨年来、FRBによる利上げ期待が高まると新興諸国の通貨や株価が売られるという展開が繰り返されてきた。こうしたケースでは、世界の投資家のリスク回避志向が高まり、円も一緒に買われてしまう。
ただ結果的にドルも円も強い通貨となるため、ドル円相場はあまり大きく動かないという展開も十分にあり得る。この場合、ユーロ円や豪ドル円といったクロス円での円高が進むことになろう。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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